【 公益財団法人 勤労青少年躍進会 理事長賞 】

父からの言葉
和光大学  永田一雅 20歳


 自分にはとても頼りになるかっこいい父親がいます。家庭の都合で現在は別居中ですが、自分は大好きで誰よりも尊敬しているため数ヶ月に1回会いに行きます。普段はたわいもないくだらない話ばかりをしているのですが、自分が18歳の誕生日を迎えた日、ドレスアップしないと入れないような高級なお店に連れていってもらいました。そこで食事をしている時父は自分に対して数々の質問をしてきました。就職の事や学業、結婚の意思の有無などを真剣に聞かれ自分は明確な答えを返せませんでした。いつもニコニコしている父親から見た事もない真面目な表情に少し戸惑いもあったのですが父からは「今はまだ曖昧でいい。ただどんな選択にしろ自分で責任をもってこれからは生きていくんだぞ。俺は助けないし、助けてやれないからな!」と言われました。その言葉を聞き、父親が自分を高級なお店に連れていってくれた理由に気づきました。父親は大人になるという事を自分に教えようとし、今までの生き方では社会で生きていけない、働いていけないという事を遠回しに教えてくれました。ゴールデンウィーク中の4日間会いに行ったのですが、その間、父の職場や高級なお店、祖父のお墓に連れて行ってもらい道中も真剣な話をしました。父親は「働くということ」についてたくさん語ってくれました。父親が新入社員の頃、初めて部下を持ったときの事、初めて役職をもらえた時の事、海外支店を任され転勤した時の事、大失敗した時の事、結婚した時の事、子供が出来て責任が増えた時の事、常務になった時の事、現在の事を赤裸々に聞き、完璧だと思っていた父親が自分たち家族のために必死で働いて、たくさん頭を下げて今の役職を手に入れ、自分たちを支えていた事に涙が止まりませんでした。毎朝電車で見かけているサラリーマンの方々は自分の仕事だけでなく家族の事も支えるために頑張っているのかなと思うと、自分も社会に出たいと思いました。正直今、社会に対する不安はたくさんありますが、たくさんの大人が不安を持ちながら社会に出て、たくさん失敗して、たくさんの経験をしているんだなと思うと勇気が出てきます。今できる事を精一杯やり切り、社会に出ようと思います。

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