【 入   選 】

【テーマ:現場からのチャレンジと提言】
思いやりボルテージ
岡田電工株式会社 工務課  藤 原 昇 平  31歳

私は高校卒業後、就職に必要な技術や専門知識を習得するために、職業訓練校で電気工事や水道工事についての訓練を経た後、現在の会社に就職しました。会社では電気工事を行う施工者として携わる事になりました。専門的な知識や技術が必要される事もあり、どの程度自分がやっていけるのかといった漠然とした不安がありましたが、いざ働き始めると仕事を覚える事で精一杯でした。その中で、仕事を通じて多くの人と出会い、助けられ、日々新しい事を学び、活かして現場を完成させる事にやり甲斐を感じていました。

ある程度の経験を積み仕事にも慣れてきた頃、上司に呼ばれ、施工者から現場管理への職種転換の提案をされました。不安もありましたが、新しい事に挑戦して自分の可能性を試したいとの思いもあり、受けることにしました。施工者としての経験もあったので「何とかなるだろう」という思いもありました。

実際に業務を行ってみると、安全管理や品質管理などの工事計画の立案や、図面の作成施工指示など慣れない業務に苦戦する日々が続きました。あの「何とかなるだろう」という思いは無くなり、現実はそんなに甘くないことだと気づきました。また、現場で強い権限を持っている事で、今まで以上に重い責任を感じるようになりました。自分がやらなければ周囲に多大な迷惑をかけてしまうのでは、取り返しのつかない問題が起きるのではと常に強迫観念に駆られ、精神的に辛い状況が続きました。

当時は、自分にとって難しく感じる現場を担当していた事もあり、どうしようもなく追い詰められ自暴自棄になり、途中で諦めてしまおうかとも考えました。そんな私の変化を感じ取ったのか、気が付くと、周りには心配して手を差し伸べてくれる会社の上司や先輩方がいました。それからは情報を共有し、やらなければならない事の順序を一旦整理し、効率的に仕事を行う事が出来ました。また、自分以外の出来る仕事を分担する事で、仕事の負担が軽減されて行きました。少しずつ肩の荷が下り、不安も解消され、無事現場を終えることができ、安堵したことを今でも覚えています。

仕事を始める事、仕事で新しい事に挑戦するのはとても大変です。今までの経験の中で楽しいと感じる事よりも、辛いと感じる事の方が多かったと思います。しかし、辛い中で得た経験や喜びは何物にも代えがたく貴重な物となりました。また、周囲に手を差し伸べられた事で、自分は一人で仕事をしている訳では無い事にも気付かされました。

現在、私には部下がいます。部下が同じように辛いと感じることもあると思いますが、その先の貴重な経験や喜びが得られるように、支援していきたいと思います。また、一人で仕事をしている訳では無くチームで仕事をしている事を伝え、思いやる心を繋いでいきたいと思います。

戻る