【 入選 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
働くことの本当の意味
東京都 柳 憲 信 18歳

私は、高校2年生の時にインターンシップで、3日間飲食店で働いたことがあった。正直なところ、 全く乗り気ではなかった。その理由は、まず、働いたところで給料が出ないとわかっているのにやる意 味はあるのか。そして一番は、自分が第一希望にした職場ではなかったからである。だが、インターン シップは学校行事の一つなので仕方なく、第一希望ではない飲食店で3日間働くことになった。

そのインターンシップが始まり、1日目はとても緊張して、職場に向かった。職場の人たちは、みん なとても優しかった。仕事の内容も丁寧に教えてくれた。しかし、第一希望ではない職場だったのでや りがいはあまり感じられなかった。やりたい仕事ではないのだから、これは当然の結果だ。1日目が終 わった。その時の私は、アルバイト経験もなかったので、初めてやる仕事や慣れない人間関係にとても 疲れた。一日中張っていた緊張の糸が解れたのか家に帰るなり、すぐにベッドに行き、寝てしまった。

そして、2日目の朝になった。私は、とても憂鬱な気分だった。行きたくない、と何度も思った。あ と、2日で終わりだからなんとか耐えようと自分に言い聞かせて家を出た。私は、なんとなく仕事をこ なしていった。お昼の時間になった時に、店長から呼び出された。店長から、「表情が硬いからもっと笑 顔でハキハキと接客をしなさい」「常に背筋を伸ばしてもっと堂々としてなさい」と、初めて注意を受けた。自分では、そうしているつもりだったがそうではなかったらしい。私がなんとなく仕事をしていたことを店長は見抜いていたのだろうか。午後は、できるだけ笑顔で接客をした。

相変わらず仕事に対する気持ちを入れられないまま3日目まで来てしまった。開店準備が終わり、開 店前に少し暇な時間ができた。私は、憂鬱だなあと思いながら、ボーっとしていた。そんな中、店長が 私にある話を聞かせてくれた。それは、3人のレンガ職人の話だった。


ある旅人が、町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しそうな顔をしてレンガを積ん でいた。旅人は、「ここでなにをしているのですか?」とその男に聞いた。すると、男は、「見ればわか るだろ。レンガを積んでいるのさ。なんでこんなことをやらなくてはいけないのだ。手を怪我するは腰 を痛めるはで、まったくついてないよ。」と言った。旅人は、慰めの言葉を残して、歩き出した。歩いて いると、また違うある男が一生懸命レンガを積んでいた。旅人は先ほどと同じことを男に聞いた。その 男は、「ここに大きな壁を作るためにレンガを積んでいるのだ。この仕事のおかげで家族を養えているのだ。大変だけど、野垂死ぬよりマシだよ。」と言った。旅人は、励ましの言葉を残して、歩き出した。さ らに歩いていると、3人目の男が目を輝かせてレンガを積んでいた。先ほどと同様に、質問をしてみた。そうしたらその男は、「歴史に残る偉大な大聖堂を作っているのだよ。多くの人のためになることをして いるのだ。なんて光栄で、素晴らしいことなのだろうか。」と楽しそうに言った。旅人はその男にお礼の 言葉を残して、歩き出した。


という内容だった。私は、一人目のレンガ職人と同じ考え方をして仕事をしていたことがわかった。目 的意識を持たず、現在与えられた仕事に不平不満を抱きながら仕事をしていた。この話は、私に衝撃を 与え、私の中の仕事においての考え方がガラリと変えた。また、仕事は、お金を稼ぐためだけにやるの ではないということを知った。それ以降、自然体で接客することができた。

このインターンシップは、間違いなく私を変えたし、今後就職して会社で働いていく上で大きな影響 を与えてくれた。私は、将来、この物語の3人目のレンガ職人のように目的や目標を掲げ、人の役に立 ちたいという信念を持って仕事に取り組みたい。

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