【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
仕事はわりきることも必要
東京都 谷 口 金 子 65歳

仕事をするとは働くこと。

私は高齢者。働いていない。一億総活躍への貢献度はゼロだ。働くのは還暦で終わりと決め働いてき た。

第1次オイルショック後の就職難。地方出身、女性、4大卒。指定校制度、自宅通勤不可等々、就職 試験までの道は遠く、男女格差、パワハラ、セクハラは至るところにあった。

失業、職安通いにアルバイト。下宿先にかかってくる田舎の母の「元気か?」の言葉に精一杯元気な ふりをした。親のありがたさに涙がでた。

株式会社と名の付く場にたどり着いたのは卒業して4年後のことだ。

定年まで働いた。居心地がよかったわけでも、仕事がおもしろかったわけでもない。仕事を探し続け た挫折と苦悩の日々がそうさせたのだ。

私が働くなかでみたのは人の弱さ。組織は人を変える。家庭人として申し分ないであろう人が会社で は姿を一変させる。会社の常識は社会の非常識といえる数々の言行。あげればキリがない。

だが言葉にも態度にもださないが真実をみている人はみている。職場には必ずいる。気配でわかる。救 われる瞬間だった。

仕事は人間関係に大きく左右される。仕事の疲れは寝れば消えるが人間関係はそうはいかない。だれ かがいなくならない限りあしたもあさっても続く。ほどよい距離を保つことを考えよう。

困っていてもみな生活のために必死だ。だれも助けてはくれない。自分の身は自分で守るしかない。逆 境は力を蓄えるチャンス。

メモを習慣にするといいだろう。書くことで冷静になれるし、ひょっとしたら後で自分を守ってくれ るかもしれない。いらなくなればいつでも捨てられる。

なにがあっても生き抜くこと。他人と比べる必要も勝負する必要もない。他人の機嫌をとってまで上 を目指すことはない。社長になっても必要とされないときはいつかくる。

5年先10年先の自分を思い描こう。人生は寿命が尽きない限り自分のものだ。

一国一城の主にも、他人に使われる身にも100%満足の場などどこにもない。

働いていると「ああ、ここまでだな」と思うときが必ずある。

その場を去るのも1つの方法だが、会社を利用することを考えることだ。横領などの悪事をしろと 言っているのでも、仕事の手を抜けと言っているのでもない。

どんなにいやでも行けばお金と休みは手に入る。辞めるのはいつでも辞められる。

発想を変えるのだ。居場所を変えるために勉強するのもいい。私のようにリタイア後に備えてまっし ぐらもあり。

ただしことは密かに進めよう。言うのは耳に入らぬ外の人だけにすること。そのほうが軌道修正もた やすく、あらぬ誤解もまねかない。

だが人としての誇りを傷つけられたときは負けるとわかっていても闘おう。

人は必ず死ぬ。そのときの後悔は少なければ少ないほどよい。ぶれない心と健やかな体を持ち続ける ことだ。

働いているとたくさんの反面教師に出会う。見ざる、聞かざる、言わざるということわざがあるが、見ます、聞きます、言いませんに努めるといい。自分の目でみて、自分の耳で聞いてものごとは判断する ことだ。あえて口にだす必要はない。

自分の人生をよりよいものにするために働いて得た経験をおおいにいかそう。

仕事は人生のすべてではない。

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