【努力賞】
【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
孤独な影と陽の差す影
香川県  城中梅太  29歳

私は精神障害者である。そんな私にも働きたい、人の役に立ちたいという気持ちは常に心のどこかにある。しかし障害者である自分にも出来ることは必ずあるという強い気持ちで仕事を探すも仕事をもらうことが出来ないのが現実だ。精神病と口にしただけでもらえる仕事の数は圧倒的に少なくなる。ならばと病気を隠して仕事を探してみると案外すぐに仕事をもらうことが出来たりする。世の中は不公平だ。働くという事は社会に出るということで、社会に出るということは一人前の社会人となることである。そう考えると障害者が一人前の社会人として認められることはそう簡単には出来ないことになるだろう。障害者全てが働くことが出来ない訳ではないのに何故、障害者が積極的に社会に出て働く事が許されないのだろう。

一度、病気を隠して仕事についてみたことがある。職員みんなが明るく優しく接してくれる毎日が充実した職場に、私はこの先もしも病気がばれるようなことがあっても受け入れてもらえるかもしれないという淡い希望を持つようになった。しかしそれはあっさりと裏切られるのである。少しのきっかけで私が精神障害者であると分かるや否や私を取り巻く周囲の環境全てが一変したのだ。そこに追い打ちをかけるように適当な理由をつけられ追い出されるように仕事を辞めさせられた。それは就職からたった数か月後の出来事だった。働きたい気持ちも人の役に立ちたい気持ちも何ら変わりはないのに精神病というだけで周囲は働くことを許さない。やはり現実はこんなものなのだ。

働くことは大事なことだがそれだけが全てではなく、あくまでも自分という人間の一部分である。私はやがてそう柔軟に考えることが出来るようになった。それもこれも自分が社会に出ることで学んだことであり、尚且つ私自身が障害者だからこそ経験し学ぶことが出来たことである。働くということは自らを知るきっかけになると同時に今、現在の社会を知るということに繋がる。そんな現在は人間を全体から見ることができず障害という一つの視点でしか見ることが出来ない、歪み偏った障害者にとって苦しい社会だ。しかし働きたい者には仕事を与えてくれない会社が悪いのではない、もはやそういうことが当たり前になっている社会全体が悪いのである。そんな社会は今、私と同じく心を病んでいる。

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