【努力賞】
【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
振り返る特別職国家公務員
福岡県  藤宮力弥  22歳

九州北部豪雨。多くの方が亡くなった災害。復興に向け自衛隊も作業している。去年までは私もその一人だった。

蝉の鳴く声が窓越しに響く中、大学で授業を受ける一人の学生。そんなそこらの学生と変わらない。しかし彼は去年まで海上自衛官だった。それが今の私である。

高校を卒業し海上自衛隊入隊、三年間勤務し退職、去年四月より大学生。ザッとまとめた経歴である。

「何故そんないい仕事辞めたの?」

「勿体無くない?なんで大学来たの?」

何度言われた事だろうか。耳にタコが住み付いた。仕事を辞め大学に入った理由、それは「イェーイ!遊びまくるぜ!」なんて一ミリも考えなかった。「もっと深く知識を学びたい!」これが正真正銘の答えである。そんな事で今の私は楽しく勉強に励んでいる。しかし、むかしはこんな考えは無かった。勉強が嫌いであった。今の私を形作っているモノ、それは自衛隊でのある経験だった。

「災害派遣!第◯◯部隊、応急発動!」

災害が発生し災害現場で救助活動を経験する事で考え方が変わった自衛官は多くいるであろう。残念ながら私は自衛官としての三年間のうち一度も経験する事が無かった。災害は決して起きてほしくないが、私は一度くらい救助活動をし、「一人でも多くの生命を救う力になれたら。」と少し心残りがある。

私の考え方が変わったのは勤務地として半年の間、東京にいた事である。

生まれてから二十年間、長崎のふる里の町から一歩も出た事の無い私が東京で半年を過ごす。これは刺激が強過ぎた。私は一人でいろんな所に行き知る事が大好きである。東京の町は全てが新鮮だった。

百聞は一見に如かず、正にその通りだった。東京での半年間、仕事休みの土日は冒険の毎日。スケジュールを立て、時間いっぱいまで、半年の間に行けるだけの所に行った。気づけば江の島まで行っていた。そして、東京での勤務が終わり長崎への勤務に戻った。

それからという物、私は気がついた。「私の知っている事なんてまだまだほんとに小さな事、もっと広く物事を知りたい!」そう考える様になった。

そんな理由で自衛官から学生となった。特別職国家公務員という筋書きは無くなったけれど、私の中にはおそらく死ぬまで強い影響を持ち続けるだろう。私もこの思いを大切にし生きていくのが目標である。今の私にプラスの力を与えてくれた事に感謝しつつ、けれども今の私の仕事である学ぶ事、これを忘れずに今の学生生活を楽しく過ごしている。仕事をし、そこでの経験によって学生になる。仕事をする事で、私の考えもしなかった方向へと進んでいく。振り返ってみると仕事の面白い面に気がつけた。

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