【努力賞】
【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
父の手伝いで気づいたこと
千葉県  小川賢人  15歳

祖母が昨年から認知症がひどくなった。

自営の理容室で60年。祖父が亡くなってからもずっと店を守って働いてきた。長男である父も一緒に働いてきた。徘徊がひどくなり老人ホームに入所した。

祖母は毎日店の掃除とタオルの洗濯をしていた。父が一人で仕事しながらこなしていたが忙しい。そこで私が手伝うことになった。定時制高校なので午前手伝い午後学校を週三日している。洗濯と掃除を甘く見ていた。

タオルは細かい毛がたくさんついていた。大きなタライで洗い落として洗濯機に入れる。お客様に使うので臭い消毒のため漂白剤を入れる。脱水後生乾きしないようにすぐ干す。

掃除も鏡をみがいたり流しをつまらせないように排水口を掃除する。お客様の目線になりていねいにする。終わるとぐったりつかれる。これを祖母はやっていたのだ。それだけでなくはさみで手入れしたりしていたのだ。

毎日のささいな当たり前を大切にといつも言っていたわけがわかった。おもてなしの心と店を愛していたからずっと働いてこれたのである。仕方なく生活のために嫌々働いている人がほとんどだろう。祖母は理容の仕事が心から楽しくて好きである。だから父も一緒に働いているのだとわかった。

まだ将来のことはわからない。だけどこの店を父の代で終わらせたくないと感じた。

『店を継ごう』

大げさだが思った。私が50代まで店が続けば100年である。老舗の仲間入りだ。跡を継ぐとか古いとかバカにしていた。伝統工芸の世界は長男が継いでいる。祖母や父、店をほこらしいとわかって良かった。これからもいろいろ発見をしたい。サービス業の奥深さを学んでいきたい。

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