【 努力賞 】
【テーマ:非正規雇用・障害者雇用で訴えたいこと】
私と仕事
三重県 咲楽 28歳

就職したての頃、心臓疾患のある私は、不安でいっぱいだった。仕事を続けるには体力的に配慮が必要な事や定期的な通院があるため障害者雇用枠で就職した。しかし、見た目には障害者とはわからない。「心臓が悪いから無理がきかない」と言ったら、わがままだと受け取られるのではないか。忙しい職場で、免除してもらわなければならない仕事があるという事は、使い物にならないやつと思われるのではないか。何も言われていないのに、そんな事ばかりが気になった。自己肯定感が低く、今のままで良いんだよと思えない。私は本当にここに居ていいのかと悩んだ。

そんなとき、一緒にお弁当を食べながら、病気についてやどんな配慮がいるのか聞かれ、何気なく上司に話したのは、主治医から言われていた言葉だった。

「無理しないで、しんどくなる二歩前にやめなきゃいけないよ」
健康な人なら「しんどいな」と思ってから休息をとれば回復するかもしれないが、心臓病の私はそれでは間に合わない。けれど、一生懸命なときや楽しいときほど、疲れを感じるのは難しい。ついつい頑張りすぎて、何日も不調を引きずる事もある。

1週間働いたら、土日はあちこち出かけて思いっきり遊んでみたいと思っても、翌週の仕事に備えて、1日くらいはゆっくり休まなければ体力が持たない。夜行バスでテーマパークへ遊びに行く友人が羨ましいと思っても、身体的に無理がきかないため、一緒に行く事ができない。

何気なく話したのを、上司はずっと覚えていて、見守っていてくださった。時折、私が無理をしているなと感じると、「しんどくなる2歩前だよ」と声をかけてくださった。この春、転勤するときもそうだった。私はできない事も多い分、できるところはきちんとやろうと奮闘してきた。その頑張る姿を見ていてもらえた気がして、とても嬉しかった。

障害と折り合いをつけながら働き続けるためには、職場の理解が必要だ。そのためには、自分の言葉で状況を伝える事が大事だとも思っている。内部障害は目に見えない。知ってもらう事が居場所づくりの初めの一歩だ。

私にとって障害は大きなコンプレックスで、他の人よりも自分が劣っているように感じていた。けれど、就職して少し変わったなと思う。人と比べれば力が足りないところはあるが、私は私で頑張っていると思えるようになった。学校の勉強などとは違い、仕事では求められる能力もはっきりしている。与えられた業務をこなすことができたとき、少しは自分を認める事もできるようになった。

初めてもらった給料で病院の支払いをしたとき、自分が働いたお金で自分の命を守れるようになったのだと誇らしかった。

就職して5年が経ったが、今でも悩んだり、つまずいたりするのは日常茶飯事だ。頑張りすぎて疲れが溜まってしまう事も多々ある。まだまだ未熟なところばかりだ。ときどき主治医や上司の「しんどくなる二歩前」を思い出しながら、私らしいワークアンドライフバランスをじっくり見つけていきたい。

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