【 努力賞 】
【テーマ:私が今の仕事を選んだ理由】
仕事の選択肢
青森県 星田樹 22歳

「あーあ。働くって何なんだろうな」
夜行バスに揺られながら、私はそう独りごちた。

大学4年生になり、私は就職活動を始めた。将来は東京に住みたいと何となく考えていたので、首都圏を中心に就活をすることにした。田舎に住んでいる私にとって、就活は想像以上に大変なものだった。東京を往復する交通費、勉学との両立、迷宮みたいな駅、大きなビル、慣れない満員電車…。様々な困難を前にして、開始早々出鼻をくじかれた気分になった。
「君は、本当にうちで働きたいのかい?」
最初に受けた会社の選考会で、面接官に言われた言葉だ。単刀直入で辛辣なその言葉に、私は面食らってしまった。私は咄嗟に「働きたいです」と答えたが、選考結果は、今後の活躍をお祈り申し上げます、だった。
――本当にうちで働きたいのかい?
私はその言葉を、しばらく心の中で反芻した。大人は、働きたくなくても働かなくていけない、そう考えていた。満員電車に揺られるサラリーマンが、楽しそうに仕事をしているような想像がどうしてもできなかった。だから、私にとって仕事は、ぼんやりとほの暗いイメージを纏ったものだった。

そんな感じで何となしに就職活動を進めていくうちに、就活のために貯めていたお金が徐々に少なくなってきたことに気が付いた。就活に充てるお金を確保するために、私は東京で短期アルバイトをしてみようと思い立った。東京に身寄りのない私はとりあえず、インターネットで適当に検索して見つけたアルバイトに応募した。その日のうちに採用の電話が来て、就活もこんな風に簡単に決まればいいのに、などと見当違いなことを私は考えていた。

当日、指定された場所に到着すると、大きな工場のような建物が目の前に現れた。そのアルバイトは倉庫での検品作業で、私は商品にひたすらバーコードシールを貼る作業を任された。職場は30代から40代の男性が多く、彼らはベテランのように見えた。私は20代の同世代に見える青年と、二人一組で作業を行うことになった。同世代だったこともあって、すぐに私たちは仲良くなった。
「君、どこから来たの」
「実は青森なんです、就活中で…」
私がそう答えると青年はたいそう驚き、私について根掘り葉掘り質問し始めた。
「どういう仕事に就きたいの」
私はこの質問をされた時に、言葉に詰まってしまった。
――本当にうちで働きたいのかい?
この前の言葉が、私の胸で鳴り響く。私は正直に打ち明けることにした。
「自分のやりたいことがよく分からなくて」
私が苦笑いしながら、こう返答した時の、青年の顔が今でも忘れられない。怒っているような、悲しんでいるような。なんとも形容しがたい顔だった。私はその顔に驚いて、どうしたの、と尋ねると、青年は驚くべきことを私に打ち明けた。
「実はね、ここで働くのはみんな罪を負った人なんだ」
この職場は過去に犯罪をして社会復帰ができない人が働く施設で、人手が足りないと時折、アルバイトを募集するのだそうだ。
「やりたい仕事が選べる君が羨ましいよ」 青年は呟くように言った。青年はやりたい仕事があってもできないのだと言う。彼には夢があった。でも、それを生涯叶えることができない。私は初めて自分のことが情けなくなった。私には可能性がまだまだあるのに、自分の可能性を自分で決め、本当に自分のしたい仕事を見つける努力を怠っていたように思った。私は青年の分まで、頑張らなくてはならないと決意を新たにした。

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