【 努力賞 】
【テーマ:女性として頑張りたい仕事・働き方】
立場が変わることで見えるもの
三重県 加藤瑞季 20歳

きっかけは水戸黄門というテレビ番組だった。小さい頃ずっと憧れていた正義のヒーロー。弱い人を守り、悪いことをした人を捕まえるというのがとてもかっこいい、私もそんな人になりたいと思っていた。そうして自然となりたいと思って憧れたのが警察官。今まで何度か経験した進路の選択は、最初は憧れでしかなかった警察官という仕事について真剣に考えるきっかけとなった。ただかっこいいだけではない、綺麗ごとばかりでは務まらない苦しい職業。知れば知るほど怖くなった。しかし同時に、それでもやっぱり私は警察官になりたいという思いが大きくなった。

「男社会」だと今でも言われる警察組織。自衛隊や消防と並んで、危険と隣り合わせの体力仕事であるため、力の弱い女性は必要でないとされてきた。しかし、近年の男女共同参画社会の推進や女性の社会進出の影響で、警察でも女性が活躍する場が広がってきている。福利厚生や育児休暇もしっかりした安定の職業。女性も男性と同じように働き、昇進を目指すことが出来る。最近の警察官募集ではこのようなフレーズを耳にすることが多くなった。今の警察は昔の警察とは違う、そんな声が聞こえてくるようだ。そして実際に、現場の生の声を聞く機会を得ることが出来た。

以前、警察学校のオープンキャンパスに参加した際、実際に子育てをしながら働いていらっしゃる女性警察官の方にお話を伺った。「出産で仕事から離れることはとても怖かったが、いざ現場に復帰してみると今までとは違った視点から色々なものが見えるようになった」とその方はおっしゃっていた。少年非行、未成年の売春、交通安全など子供を持つことによって見方が変わるものは確かにある。そしてその視点こそが、犯罪の防止や被害者保護に役に立つのである。もちろん、出産や育児等のブランクを経て仕事に復帰することはそんなに甘くないのかもしれない。でも、今まで見えなかったものが新たな視点から見えるようになるというのはどんなにすばらしいことだろうと、私はそのとき感じた。まだまだ数の少ない女性警察官が、自分の仕事に誇りを持ち柔軟な姿勢で活躍している姿はとても輝いていた。警察官になって、女性だからこそ出来る仕事をやりたいと思っていたが、そのもう一歩先までは考えていなかったためとても新鮮であった。

結婚すること、子供を産むことだけが必ずしも女性の幸せだとは限らない。でもその経験をした女性が、ブランクがあるからといって社会で必要とされないというのは間違った考えだと私は思う。子供が生まれたからこそわかることも多くあるだろうし、同じ母親という立場の人から頼りにされることもきっとある。私はまだ警察官を目指している身であるが、いつか夢がかなったら、あらゆる立場と視点から寄り添うことの出来る警察官になりたい。そしてその先に、私が母になる経験をしたとしたら、また新たな世界が広がっているのかもしれない。女性だからという理由で何かを諦めることなく、一人の人間として誰かに必要とされる働き方をし、いつか、今の私のように警察官に憧れる子供たちに誇りを持って話せるようになりたい。

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