【 努力賞 】
【テーマ:女性として頑張りたい仕事・働き方】
女性としての働き方
愛知県立時習館高校 仲川凜香 17歳

「兜首(兜をつけた身分の高い敵方の武将の首級)の死化粧(討ち取った首級を首実検する前に確認をし易くするため、また死んだ敵将の尊厳を保つために血糊やよごれを洗い落とし、防腐、殺菌、修復などの処置を施したあとお歯黒を塗る作業)はその当時の女性たちの仕事だったんですよ」
講義を受けていた私は一瞬で気分がすぐれなくなりました。最近中東地域で勢力を伸ばし、人質を非人道的で過激な処刑方法で世界を震撼させた宗教組織のニュースとがダブリ、カルチャーショックを受けたからです。
「もし私がその時代に生きていたなら、そんなおぞましい作業ができただろうか?」
間髪を入れず続けて先生が質問しました。
「死化粧をする女性たちはどんな気持ちでそれをこなしていたと思いますか?」
私は嫌々ながらも死化粧をせざるを得ない時代や環境に生まれ育った当時の女性たちを気の毒に思っていました。しかしその答えは思いもよらぬものだったのです。
「亭主や主人の出世を願い、期待し、周りの女房たちに自分の夫の戦での勇猛果敢な姿、戦果を自慢し合い、また死者の魂が安らかなるように懇切丁寧に首級を扱い、朗らかに語り合いながら作業を進めたのです。そんな絵巻物も残って(存在して)いますよ」
さらに先生は続けます。
「戦国時代の男女は自分のできる仕事、つまり男は戦で名を上げ、女は夫が獲ってきた獲物(敵将の首級)を料理(死化粧)する。これは男は男の仕事、女は女の仕事をこなすというワークシェアリング(仕事分配)であり、男尊女卑ではなく男女平等であったわけです。そしてあなたたちが思いえがいている男女差別の歴史は、江戸時代における儒教思想の影響によるものが大きいのです」
先生の説明に、私が今まで思い描いていた男尊女卑やその歴史認識、男女の仕事(労働)による差別についてのすべてが崩壊しました。

現在日本は男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法等の法整備は進みつつあり、そのことに関しては喜ばしいことなのですが、法律が先走り、雇用する側と労働者との意識差、男性側と女性側の考え方に温度差があるため、それらの問題すべてをクリアしなければ法の下の平等は改善されるものではないと思っています。
男性と女性の労働条件が法の下で平等ということで現場での環境、状況、条件、時間等のすべてを男性と女性で同じにしてしまったら日本は近いうちに日本人そのものがいなくなってしまうような気がします。女性が職場でバリバリ働くことによって晩婚になったり、お一人様(婚期を迎えても結婚せず独身のまま自由奔放に生き、老後に至る人たちの総称)になることによって出生率低下を招き、その結果として日本の人口が減ってゆき、いずれ労働力において日本人ではまかないきれなくなり、大部分を外国人に頼る日が来るのではないかと私は危惧しているのです。国も少子化について本腰を入れて取り組んでいる様に思われますが、空回りしているのが現状です。
では一体どこに原因があるのでしょうか?やはり、女性の労働状況、環境、時間、条件などの働き方に問題があるように思います。戦国時代以前のワークシェアリングのように、男には男の仕事、女には女の仕事があるはずです。男性と女性で何もかも一緒にしてしまったらそれこそ平等でなくなってしまいます。

ワークライフバランスという言葉があります。仕事にやりがいを見つけ、その職責を果たしながら家庭生活、育児、地域貢献を実現することです。現代人にはこのワークライフバランスが取れていない人が多く見受けられるようです。自分あっての仕事であり、また仕事にやりがいを見出すことも人生を送るための大事な要素だと考えます。現在高校生である私は将来の可能性を見つめつつ女性として自分のできる仕事を頑張りたいと思います。

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