【 佳 作 】

【テーマ:女性として頑張りたい仕事・働き方】
社会人として、母として、自分らしく輝くこと
東京都 戸井田恵 30歳

思えば学生時代までは、自分が働くことについて浅はかな考えしか持っていなかったように思う。「人に自慢できるような華やかな職場で働きたい」「残業の多くない仕事がいい、けれどある程度やりがいも感じられる仕事がしたい」など、就職前の自分が理想とする仕事や職場は、今思えば非現実的だった。

社会人7年目になり、紆余曲折を経て、3社目でやっとたどり着いたのは念願の出版・広告業。主に本やインターネット上のポータルサイトで医療情報を発信する仕事だ。大好きな「書く」ことを通して、地域の医療情報を必要とする人に発信できる喜び。この仕事に就く前は賃金を得ることや義務感が働く理由の上位に来ていた私にとって、得られる毎日の充実感は比べようのないものだった。

また、偶然ではあったが、女性が輝ける会社であることも充実感を強く感じられた大きな理由の一つ。男女比が3:7と、圧倒的に女性が多い会社で、これまでに勤務した会社と違い、男性であろうと女性であろうと、任される仕事の重みや権限は文字どおり平等。性別に関係なく、個人が尊重される会社だった。そしてそこには、時間短縮勤務で子育てと仕事を両立するなど、会社を離れれば母親である女性も多かった。職場で「できる女性」と評判の敏腕女性編集長。ご自宅にお邪魔させてもらった時、職場で見せる顔とはまったく違う、優しい妻、温かな母の姿であることに感動をおぼえたものだ。

しばらくして自分が妊娠し、この先のことを考えた際、出産後も同じ職場で働き続けること以外の選択肢が浮かばなかったくらい、温かで理想的な職場だった。今では社会で推進されている育児休業制度だが、中には育児休暇が取りにくく、妊娠が発覚した途端、辞めざるをえない雰囲気の会社もあると聞く。そういったところとは正反対で、たとえ体調が悪く出勤できないような場合でも、みんなが心から「体を大切に、無理をしないでね」と言ってくれる。育児休業から復帰した場合も、快く復帰できるポジションや環境を整えてくれる、助け合いかつ女性を応援する文化が根付いている会社なのだ。そんな会社だったからこそ、お腹が重く通勤ラッシュがつらい時期になっても、「毎日頑張ろう」「自分を必要としてくれる同僚のためにいい仕事がしたい」と思えた。

現代の日本では、少子高齢化による労働力の減少が課題となっているが、このように女性にとって働きやすい会社が増えれば、日本でももっともっと、子育てと仕事を両立する女性が増えると思う。昭和30年代生まれの私の母親に話を聞く機会があった。母によると、ほんの少し前までは女性は結婚したら寿退社が当たり前の風潮だったそう。その頃には育児休業という女性を支援する仕組みは生まれてさえいなかった。

日本は諸外国に比べると、働く母親への環境が整っていないという声もあるが、今では段階的に育児休業給付金の給付額が引き上げられるなど、政府主体で確実に環境改善へ前進しているのもまた事実。女性は専業主婦を選択することも、ワーキングマザーを選択することも自然にでき、あらゆる生き方、働き方を選択できる時代だ。

私はまず、そのような素晴らしい時代に生まれたことに感謝したい。そして、働くことや育児にはさまざまな考え方やそれぞれの家庭の事情があるが、私は働きながら子育てをして、自分らしく輝く道を選びたいと思う。この大きな社会の中で、自分はちっぽけな存在かもしれない。それでも子どもを産み育てること、同時に働くことで、これまで支えてもらっている社会に少しでも恩返しをし、未来の社会への投資ができればと考えるからだ。

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