【 努力賞 】
【テーマ:女性として頑張りたい仕事・働き方】
結婚したい男性たちへ
大阪府 七海 43歳

現在の職場に、「晩ごはんの支度をしないといけないので早く帰りたいです」と時々ぼやいている新婚さんがいる。男性である。

まだ20代の彼の奥さんは看護師さん。彼より帰宅が遅かったり、夜勤があったりなので、彼は当たり前のように家事をこなしているらしい。「えらいねぇ」と褒めると、「共働きなので当然ですよね」とサラリ。

最近、『家事メン』や『育メン』という言葉が聞かれるようになった。結婚しても働いてほしいと、兼業主婦であることを望む男性が増えているそうだが、一体どれだけの既婚男性が、共働きにおいて女性と同じように家事をこなし、それを『当然のこと』として奥さんをフォローできているのだろうか。

私は23歳とわりと早くに結婚した。夫は結婚しても仕事を続けてほしいと言ったし、私も辞めたいと思わなかった。子どももしばらくはいらないねと、夫婦2人で気ままに好きなことをして暮らしていた。

夫は全く家事をしない・できない人だった。頼むと『嫌々』やるが、自ら何かを積極的にやろうとする人ではなかった。『夫に家事をやらせるには、褒めておだてて育てろ』という言葉の通りに実行してみたが、全くの徒労だった。そもそも彼には『男性が家事をする』という概念がなかった。

私が結婚した当時働いていた会社は三交代制で、週に何日かは夜9時までの夜勤があった。休みも週休二日ではあったが、仕事の性質上連休はなかなか取れず、そのうえ家事は全て私にのしかかる。結婚前から5年間働いたところだったが、これでは身体が持たないと転職した。

次に就職したのは小さな印刷会社だった。私が入社した当時は社員が40人ほどおり、仕事も過酷ではなかった。時々残業することはあったし、月に何度かは土曜日出勤の日があり、完全週休二日制ではなかったが、仕事に余裕ができたので、なんとか家事もこなせていた。

だが、数年経つと状況は変わった。会社の経営が思わしくなくなり、大量のリストラがあった。私は留まることができたが、多くの社員がいなくなった。リストラにあった人だけでなく、会社に反発した人も辞めていき、気が付くと私の部署は私と後輩1人だけになっていた。人は減ったのに仕事量は変わらないので毎日残業。時々徹夜することもあったし、2週間休めないこともあった。仕事自体は好きだったし、まだ若かったからできたことだろうが、それもそう長くは続かなかった。

仕事でいっぱいいっぱいのところへ、帰ったら家事が待っている。夫は自分で何か作って食べたのはいいが(冷凍食品など簡単な物)、後片付けもせずに全てシンクにそのまま放置。洗濯物がたまっていてもおかまいなし。私が夜遅く空腹で帰ってきた時に、「おかえり」も言わず、ソファーに寝転がってテレビを見ながら居眠りしているのを見て、何度殺意がわいたことだろう。貴重な休みも一人で家事に忙殺された。

私もいけなかった。『このままではだめだ』ときちんと伝えて話し合いをするべきだった。だけど私は一人で我慢し悩み、ストレスをためて、とうとう心と身体を壊してしまった。

結局私たちは結婚13年にして離婚した。子どもは持たなかったが後悔はない。周りからは「子どもができたら変わるよ。」と言われていたが、ここまで何もしない・できない人が、子どもができたからといって、いきなり家事ができるようになるとは到底思えなかったし、家事だけでなく、育児も全て私が背負わなければいけなくなるのかと思うと絶望感しかなかった。

女性が働きづらい、子育てがしにくい世の中だと言われる昨今、それは決して社会のせいだけではない。私のように個人レベルで、夫が家事や育児に協力的ではないため、仕方なく自分の意にそぐわない仕事をしたり、子どもを持たないでいる女性も多いはずだ。

結婚を考えているが、奥さんにも働いてほしい、だけど子どもも欲しいと思っている男性諸君は、そのことを重々肝に銘じてもらいたい。

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